目をつむると、暗がりの中をいつも一本の川がながれている。
幼少年期、いちばん身近にあったのは川だった。
春と秋は、川の瀬を渡りながら様々な魚を追った。夏は終日、冷たい流れに浸って魚のように泳いでいた
雪纖瘦。
その頃のことを、かつて『川のある風景』と題して回想記を書いたことがある。
川の流れのように、無心のときは流れていた。そして日々の記憶もまた、川の流れそのもののように尽きることはなかった
雪纖瘦。
そんな心の川も、いつのまにか遠くなってしまった。
ある日には、近くの森の木に川のことを聞いてみたりする。
木の幹に耳を押しあてる。すると、とおい川の瀬音が聞こえてくる。それは言葉にならない声だ。過去からの声か、未来からの声かもわからない。その曖昧な声に、未知なる言葉を探しつづけながら、日記のページを開いたり閉じたりしている
關島。